山梨・長野・北海道と並んで、日本4大ワイン産地とされる山形県。そこで作られるワインも数多く出荷され、全国で高い評価を得ています。
ブドウの収穫も終える頃、日本で唯一20年以上続くワイン専門月刊誌「
ヴィノテーク」の編集長である吉田さんが、県内のワイナリーを訪れるため山形へ足を運ばれました。その際、高畠ワイナリーを見学しつつ山形のワインについてのお話を伺いました。
山形のワインはしっかりとした「酸」がある。
私は職業柄、日本各地のワインを試飲する機会があります。そして、山形のワインを飲んだ人たちのたいていは、「酸がしっかりしている」と言います。私もそう思います。「酸が強い」ではなく、「良い酸がある」と表現したほうがいいでしょうね。
日本のワインは今までずっと酸が少ない、頼りないと言われていました。ヨーロッパなどのワイン伝統国では、「ワインは酸が要(かなめ)」と言われているほどなんです。日本人は酸に弱いからと言われてもいたのですが、そんなことはありませんよね。私たちは酢の物をたくさん食べる民族ですから。ワインはやはり酸がないと熟成のおもしろさも出てきません。その点、山形のワインは「酸が良く、正しく熟成させていけば、特徴のあるワインに育っていく」ということを実感できます。
しかし、ただ酸があればいいわけではなく、ワインはバランスです。今回、山形県の11のワイナリーのほとんどを訪問いたしましたが、まさにブドウから感じる果実味があり、ワインのバランスがとれているな、そしてもっともっと美味しくなる可能性があるな、という印象を強くもちましたね。
山形のワインの特徴であるこの酸は、山形の気候風土が生み出すものです。夏は時に40度を観測する一方、山形の気候は1日の寒暖の差が激しい。そうすると糖度も酸度もたくさんあるブドウができるので、作られたワインも果実味に特徴が出てくるのです。日本はちょうど収穫のころに台風がきます。ブドウなどは台風がきてしまう前に、先に収穫してしまうこともあるんです。本当にブドウが成熟するまで育てるのが課題でした。それでビニールをかけたり、ブドウの房にカサをかけたりしてしのぎ、その労力は大変なものだと思います。そういう作業をして理想に近いブドウを作った結果、山形のブドウは、糖度も酸度もほかのエキス分も濃いのでしょう。日本のブドウ栽培家、ワインの作り手たちは山形県を魅力的に感じていると思いますね。
取材の際見学させていただいたのが、県内でも有数のワイナリーとして知られる高畠ワイン。
温度制御のできる貯酒用のタンク。ここで沈殿物を取り出すという作業を行う。
フランス製の樽で熟成中のワイン。やがて瓶詰され市場へ出荷される。
まさに山形の気候と職人技が作り出した山形セレクションにも認定されている「上和田ピノ・ブラン2005」
山形の栽培家・醸造家は、職人的でまじめ。若い人も生き生きしている。
今回の訪ねたワイナリーでの印象は、栽培や醸造に携わる皆さんがまじめで素朴なこと。そして一番感じたことは、醸造や畑仕事を若い人が生き生きとして行っていることです。山形のワインはそれぞれ特徴あるのがおもしろいと思うんですよ。若い人がよく働いて、よく勉強していて、右ならえではないワインづくりの時代が、少なくとも山形の産地にはあるなと思いました。勉強して戻ってきた若者や次代を継ぐ人に、自分はこうしたワインを作りたいという意志があるんだと思います。
そういう若い栽培醸造家の人たちは、ここで良いブドウが採れることを確信しているんじゃないか、とも思います。
山形はおもしろい。豊かさを感じる。
高畠ワインのワインショップでは、ワインの試飲もできるほか、特産品も販売している。
今回訪ねてみて、山形県はこんなに豊かだったのかしらと感じましたね。食べ物も美味しいし、特徴があちこちに見えて楽しい県です。だから外側から見ていると、すごくうらやましい。外から来る人は山形で育った、郷土の味がいいんです。つまり、いつもと同じ味だったら楽しみがありませんが、地元のワインとお料理があって、もう1回来てみようと思うのが、旅のおもしろさであり、おいしさです。ヨーロッパでは、その土地土地で食とワインがくっついていると言われますが、そういうことなんです。単においしい料理だったらどこでも食べられます。そうではなく、そこにふっと山形の風が吹いてくるような、ここでしか味わえない雰囲気があるんです。